食品からの内部被曝に関する参考値 [夜話]
「厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課(2002):緊急時における食品の放射能測定マニュアル. 39p.」についている付録の資料をもとに、食品からの内部被曝について、少し試算してみました。ちょっと古い資料なので、最新の知見とは多少違うかもしれませんが、大きく間違いということはないでしょう。
まず、平均的に、どれくらいの食品を食べているか?・・・というのをまとめます。
表1:平均的な食品摂取量(g/日)
食品摂取パターンは、好き嫌いとか量とか、個人差が結構あると思うので、平均は平均。あくまで参考値です。私は、結構乳製品が好きなので、もっと乳製品に偏って食べてる気がします(^_^;)あと、1日に1.4kgも食べてるの・・・?と、自分の場合は、思いましたが・・・。
乳製品とそれ以外に分けたのは、放射能の暫定基準値が違うからです。たとえば、セシウムだと、乳製品は、200Bq/kg、それ以外は500Bq/kgです。
乳児~成人まで、定義がよく分かりませんでしたが、食品摂取パターン等から推測して、乳児:母乳・牛乳等を主たる栄養源としている、幼児:離乳~幼稚園くらい、少年:小学生~中学生くらい、青年:高校生~大学生くらいまで、成人:それ以上・・・な感じでしょうか。
当初は、放射性ヨウ素がニュースになっていましたが、最近よくニュースになるのは放射性セシウムですね。理論的にも、放射性ヨウ素は放射壊変してしまい、非常に少なくなっているはずです。これからは長寿命核種、特にセシウムによる被曝に注意することになると思います。
そこで、今回は、セシウムを対象として試算しました。
表2:Bq→Svへの換算係数
表1および表2の値を使って、毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみからなる食事をし続けた場合の年間実効線量を計算すると、
表3:毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみ摂取し続けた場合の年間実効線量
のようになりました。なお、134Csと137Csの比率は、KEKで観測された大気中の存在比が大体1:1ということから、1:1を仮定しています。
というわけで、毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみ摂取し続けた場合には、数mSv/年のオーダーということのようです。
ところで、実際には、基準値ぎりぎりのものばかりではないこと、福島~関東産のものが食生活に占めている割合、品目によって汚染の度合いが大きく異なるということも考える必要があります。日本の食糧自給率の低さや、国産品の割高感からすると、普段から摂取率は相当に低いと思います・・・。ただ、これは各家庭等の食生活のあり方に大きく依存するので、いちがいに言えることではありません。
実際のところ、うちは何%くらいなのか?ということを考えたり、あるいは、うちは何%以下にコントロールする!ということを考えたりすることになると思います。いきなり0%ということも非現実的ですし、冷静に落としどころを考えることになりそうです。表4と表5に、基準値に対する摂取割合でまとめてみました。
表4:摂取割合に応じた乳製品等からの年間実効線量(mSv/yr)
表5:摂取割合に応じた乳製品等以外の食品からの年間実効線量(mSv/yr)
品目別で考える場合の参考として、乳製品以外の食品群は、重量としてどれくらいの割合食べているか?・・・ということを表6にまとめてみました。平均なので、実際には個人の嗜好等により変わります。
表6:乳製品以外の食品群で、品目別の重量割合
野菜は、特に葉っぱものがニュースになっている印象があったので、葉っぱものだけ細かく分けて見ました(ただ結球・非結球は区別できてない)。やはり、日本人は穀類(米)と野菜を多く食べてますね。ただ、葉っぱものの割合はそこまで、大きくはないのですね。ちょっと意外でした。
2011/06/06追記:
上記、単に実効線量と書いてしまっていますが、預託実効線量のことです。コメント欄で、質問いただきましたので、補足しておきます。
まず、平均的に、どれくらいの食品を食べているか?・・・というのをまとめます。
表1:平均的な食品摂取量(g/日)
品目 | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
牛乳・乳製品等 | 600 | 178.4 | 322.5 | 161.9 | 105.9 |
その他 | 383.6 | 767.2 | 1081 | 1226.4 | 1336.8 |
合計 | 983.6 | 945.6 | 1403.5 | 1388.3 | 1442.7 |
食品摂取パターンは、好き嫌いとか量とか、個人差が結構あると思うので、平均は平均。あくまで参考値です。私は、結構乳製品が好きなので、もっと乳製品に偏って食べてる気がします(^_^;)あと、1日に1.4kgも食べてるの・・・?と、自分の場合は、思いましたが・・・。
乳製品とそれ以外に分けたのは、放射能の暫定基準値が違うからです。たとえば、セシウムだと、乳製品は、200Bq/kg、それ以外は500Bq/kgです。
乳児~成人まで、定義がよく分かりませんでしたが、食品摂取パターン等から推測して、乳児:母乳・牛乳等を主たる栄養源としている、幼児:離乳~幼稚園くらい、少年:小学生~中学生くらい、青年:高校生~大学生くらいまで、成人:それ以上・・・な感じでしょうか。
当初は、放射性ヨウ素がニュースになっていましたが、最近よくニュースになるのは放射性セシウムですね。理論的にも、放射性ヨウ素は放射壊変してしまい、非常に少なくなっているはずです。これからは長寿命核種、特にセシウムによる被曝に注意することになると思います。
そこで、今回は、セシウムを対象として試算しました。
表2:Bq→Svへの換算係数
線量係数(mSv/Bq) | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
134Cs | 2.60×10-5 | 1.30×10-5 | 1.40×10-5 | 1.90×10-5 | 1.90×10-5 |
137Cs | 2.10×10-5 | 9.70×10-6 | 1.00×10-5 | 1.30×10-5 | 1.30×10-5 |
表1および表2の値を使って、毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみからなる食事をし続けた場合の年間実効線量を計算すると、
表3:毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみ摂取し続けた場合の年間実効線量
実効線量(mSv/yr) | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
牛乳・乳製品等 | 1.0 | 0.15 | 0.28 | 0.19 | 0.12 |
その他 | 1.6 | 1.6 | 2.4 | 3.6 | 3.9 |
合計 | 2.7 | 1.7 | 2.7 | 3.8 | 4.0 |
のようになりました。なお、134Csと137Csの比率は、KEKで観測された大気中の存在比が大体1:1ということから、1:1を仮定しています。
というわけで、毎日暫定基準値ぎりぎりの食品のみ摂取し続けた場合には、数mSv/年のオーダーということのようです。
ところで、実際には、基準値ぎりぎりのものばかりではないこと、福島~関東産のものが食生活に占めている割合、品目によって汚染の度合いが大きく異なるということも考える必要があります。日本の食糧自給率の低さや、国産品の割高感からすると、普段から摂取率は相当に低いと思います・・・。ただ、これは各家庭等の食生活のあり方に大きく依存するので、いちがいに言えることではありません。
実際のところ、うちは何%くらいなのか?ということを考えたり、あるいは、うちは何%以下にコントロールする!ということを考えたりすることになると思います。いきなり0%ということも非現実的ですし、冷静に落としどころを考えることになりそうです。表4と表5に、基準値に対する摂取割合でまとめてみました。
表4:摂取割合に応じた乳製品等からの年間実効線量(mSv/yr)
牛乳・乳製品等 (重量%) | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
10 | 0.10 | 0.01 | 0.03 | 0.02 | 0.01 |
20 | 0.21 | 0.03 | 0.06 | 0.04 | 0.02 |
30 | 0.31 | 0.04 | 0.08 | 0.06 | 0.04 |
40 | 0.41 | 0.06 | 0.11 | 0.08 | 0.05 |
50 | 0.52 | 0.07 | 0.14 | 0.09 | 0.06 |
60 | 0.62 | 0.09 | 0.17 | 0.11 | 0.07 |
70 | 0.72 | 0.10 | 0.20 | 0.13 | 0.09 |
80 | 0.82 | 0.12 | 0.23 | 0.15 | 0.10 |
90 | 0.93 | 0.13 | 0.25 | 0.17 | 0.11 |
100 | 1.0 | 0.15 | 0.28 | 0.19 | 0.12 |
表5:摂取割合に応じた乳製品等以外の食品からの年間実効線量(mSv/yr)
その他の食品 (重量%) | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
10 | 0.16 | 0.16 | 0.24 | 0.36 | 0.39 |
20 | 0.33 | 0.32 | 0.47 | 0.72 | 0.78 |
30 | 0.49 | 0.48 | 0.71 | 1.1 | 1.2 |
40 | 0.66 | 0.64 | 0.95 | 1.4 | 1.6 |
50 | 0.82 | 0.80 | 1.2 | 1.8 | 2.0 |
60 | 0.99 | 0.95 | 1.4 | 2.2 | 2.3 |
70 | 1.2 | 1.1 | 1.7 | 2.5 | 2.7 |
80 | 1.3 | 1.3 | 1.9 | 2.9 | 3.1 |
90 | 1.5 | 1.4 | 2.1 | 3.2 | 3.5 |
100 | 1.6 | 1.6 | 2.4 | 3.6 | 3.9 |
品目別で考える場合の参考として、乳製品以外の食品群は、重量としてどれくらいの割合食べているか?・・・ということを表6にまとめてみました。平均なので、実際には個人の嗜好等により変わります。
表6:乳製品以外の食品群で、品目別の重量割合
分類(重量%) | 乳児 | 幼児 | 少年 | 青年 | 成人 |
---|---|---|---|---|---|
穀類 | 19.9 | 19.9 | 22.5 | 22.8 | 19.9 |
果実類 | 13.7 | 13.7 | 10.0 | 8.0 | 8.9 |
野菜(葉) | 4.2 | 4.2 | 4.9 | 4.6 | 5.0 |
その他の野菜 | 13.3 | 13.3 | 15.5 | 14.6 | 15.8 |
海草類 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.5 |
魚介類 | 5.8 | 5.8 | 6.1 | 6.4 | 8.6 |
肉類 | 6.7 | 6.7 | 8.2 | 9.3 | 5.6 |
卵類 | 3.8 | 3.8 | 3.8 | 4.2 | 3.0 |
その他 | 32.1 | 32.1 | 28.8 | 29.7 | 32.6 |
野菜は、特に葉っぱものがニュースになっている印象があったので、葉っぱものだけ細かく分けて見ました(ただ結球・非結球は区別できてない)。やはり、日本人は穀類(米)と野菜を多く食べてますね。ただ、葉っぱものの割合はそこまで、大きくはないのですね。ちょっと意外でした。
2011/06/06追記:
上記、単に実効線量と書いてしまっていますが、預託実効線量のことです。コメント欄で、質問いただきましたので、補足しておきます。
タグ:放射線量
今日のニュースでこれから魚が特に内部被爆を考えると、
ずーとしばらく、思いっきり安心して食べれない。
対策はせめて栄養バランスよく抵抗力を維持させるくらいしかないですかね。詳しい内容で参考になります。
有難うございました。
by AI (2011-05-22 00:28)
AIさん>
コメントありがとうございます。動物性タンパクはほぼ魚という食事にしたとしても、魚介類が食卓に占める割合は15%くらいなんじゃないかなと思います。また、一口に魚と言っても、産地はいろいろです。汚染している可能性があるのは、銚子より北側の北西太平洋だと思うので、北西太平洋産もしくはそこを回遊する魚だけに偏って大量に食べるということをせず、いろいろな産地のものをバランス良く食べるというだけでも、実効線量をかなり減らせるんじゃないかなと思います。
by 水琴 (2011-05-22 01:43)
ストロンチウム、プルトニウムが加算されたとしても、誤差程度だと思っててよろしいとはんだんしていいのでしょうか。
by NO NAME (2011-05-31 06:45)
NO NAMEさん>
これまでの測定結果の報道を見る限り、プルトニウムは、無視できるレベルの量しか漏洩していないと思われます。ストロンチウムは、あまり測られていないのか、情報源が少なく難しいところです。ただ、日本分析センターが、各核種の空間線量率への貢献度を測定した結果から判断すると、消去法的にですが、セシウム以外の長寿命核種は、セシウムに比べて非常に少ないと考えざるを得ません。したがって、ストロンチウムが重要なファクターになることは考えにくいというのが、現在の私の考えです。
by 水琴 (2011-05-31 20:24)
ストロンチウム・プルトニウムのお考えを示してくださって、ありがとうございました。
by NO NAME (2011-05-31 20:50)
水琴様
以前にも質問させて頂いた我孫子在住の者です。
いつも冷静な計算を示して頂きありがとうございます。
私も念のため、同じ資料にあたり、同じ計算をし、水琴様と同じ数値を導出することができ、大変冷静になることがてきました。
ただ一点気になるのですが、例えば、表3で乳児が基準値ぎりぎりの食事を続けた場合年間2.7mSvとなりますが、2年目も同じように基準値ぎりぎりの食事を続けた場合は、1年前の2.7mSvに2年目の2.7mSvを加算して5.4mSvが2年目の被曝量になるという理解となるのでしょうか。
これはセシウムの対外排出を考慮しない考え方とはなりますが、念のためご教示頂ければ幸いです。
by abby (2011-06-06 16:43)
連投すみません。
いろいろとWeb検索していて発見したのですが、
ご説明されている年間被曝量というのは、おそらく
「暫定基準値ぎりぎりの食品量を50年とか70年とか食べ続けることを前提とした場合の年あたり被曝量換算値」という理解となるのですね。
つまり、「ベクレル→シーベルト換算係数」には、生涯積算の概念も盛り込まれているということかと理解しました。
よく考えず質問してしまいすみませんでした。この考えでよろしいですかね(汗)。
by abby (2011-06-06 17:06)
abbyさん>
こんばんは。
厳密に言うと、「一年間摂取し続けた結果として、そのせいで将来にわたって被曝する線量見込みも含めた総ひばく量」の推算です。たとえて言うなら、一年後の時点では体内に残っている"残高"の分も、あらかじめ一年目の決算に合算しておくような感じでしょうか。
by 水琴 (2011-06-06 22:57)
水琴様
ご教示ありがとうございました。
ただ、預託実効線量ですので、2年目も同様の暫定基準値ぎりぎりの食事を続ければ、1年目の2倍の被曝量になってはしまうということですかね。
すみません、私の理解不足かもしれませんが、ここについてだけご教示い
ただければ幸いでございます。
by abby (2011-06-08 17:05)
abby さん>
当然ながら、総被曝量としては、2倍の期間を経過させれば、2倍になります。
一年間で5mSvの預託実効線量を受けるというペースならば、二年かければ単純に10mSvになります。
ただ、放射線の健康影響は、原理的には人間の自然治癒能力を超えるスピードでDNA等の損傷が発生するということだと考えられますから、人間が回復するスピードのほうが十分に上回っているような場合には、長期間を合計した値というのは特に重要ではないように思いますが・・・。
by 水琴 (2011-06-08 23:30)
水琴様
>当然ながら、総被曝量としては、2倍の期間を経過させれば、2倍になります
ということですよね。ありがとうございます。
>人間が回復するスピードのほうが十分に上回っているような場合には、長期間を合計した値というのは特に重要ではないように思いますが・
なるほど。これは忘れがちな部分ですね。どうしても当方危険サイドで考えてしまうものでして・・・
by abby (2011-06-11 20:54)
遅ればせながらで恐縮ですが、拙ブログで参考にさせていただきました。この種の議論、数字に弱い文系としては非常に助かります。ありがとうございます。
小生江戸川区臨海部在住で、汚染度からして柏についての分析は非常に参考になります。
ちなみに小学校低学年の息子には「おまえ一生煙草吸うな! それなら何とか帳尻合うはずだから」とアバウトな話をしております(笑)。そういうオヤジは現在喫煙中(ただしわずか半年弱)。
by macht (2011-06-13 22:11)
machtさん>
ご参考になれば幸いです。
パパが吸ってては、説得力が・・・。子どもは見てますよ(笑)
by 水琴 (2011-06-13 23:32)