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ゴミ焼却場の放射能汚染 [夜話]

いつかは問題になって来るであろうと思っていましたが、各自治体のゴミ焼却場の焼却灰の放射能レベルが高いということが話題になってきました。

ある程度の広さから集めてきて、燃やしてかさを減らすので、濃縮されるのは、ある意味では当たり前な話です。草刈りもする季節なので、余計でしょう。

報道によると、たとえば柏の焼却場のレベルは、原発北西方向の高線量地域の表層土壌に匹敵するかやや上回る水準と思われ、扱いにはそこそこ注意が必要なものと思います。とりあえず、一時保管というのが現状ですが、いつまでもそういうわけにはいかないでしょう。流山市は、うっかり(?)普通の処分場に送ってしまったらしいですが・・・。まあ一度や二度で現実に支障を来すかというとそうでもないでしょうが、継続的にやってはいけません。

放射性物質に限らず、汚染の対策は、二通りです。

(1)濃縮して容量を減らし、特別な場所で厳重保管する
(2)希釈して普通に捨てる

(1)は、ごく一般的な方法です。ゴミを収集・減容して1カ所に集めて処分するのは、私たちの本能と言ってもいいくらいです。今回の場合は、焼却灰を処理施設に持って行って1000~10000倍程度に濃縮し、低レベル放射性廃棄物として六ヶ所村に地中処分するという戦略になるでしょう。どのようにして濃縮・輸送するかということが技術的に確立していれば、すぐにでもできそうです。医療施設や研究施設などからでる放射性廃棄物などを処理する流通網や設備はすでにあるわけなので、それを少し修正すれば、個人的には、あまり難しくなさそうに思いますが、話が動き出さないところを見ると、何か課題があるのでしょうか?予算確保に手間取っているとかでしょうか。あと、低レベル放射性廃棄物処分自体に反対している人々がいることも事実です。そこでスタックしてしまうようだと、(1)の方法は使えません。

(2)は、どうでしょうか。エントロピー増大の法則(万物は必ず散らかる法則)に敬意を表するならば、本来的には(2)の方法がオススメです。(1)は、管理にほころびがあると、濃縮しているだけにいろいろと面倒です。(2)の方法では、すでに薄まっているので、そういう問題は発生しません。将来的な生物濃集の可能性を勘案しても、1000-10000倍程度に薄めれば、経験的には無害と言っても差し支えなくなるでしょう。具体的には柏の焼却灰1kgにつき、汚染されていない焼却灰1~10tを混ぜて一般廃棄物化して処分する・・・ということになりますが、こちらもまた、考えてみると1000-10000倍程度薄めるというのは意外に大変なのかもしれませんね。

こうしてみると、どうも、濃度が中途半端にいやらしいという事のようです。(1)のためには、1000~10000倍濃集させる必要があり、(2)のためには、逆に1000~10000倍薄めなくてはいけない。かといって、何もしないで処理していいかというと、それはぎりぎりアウトな気がします。

どちらの選択をするとしても、さっさと実証試験くらいはやりはじめないと、現実に焼却灰はどんどん貯まってしまうので、結構忙しい問題です。

遠い将来に実現するのかしないのか分からないような脱原発の夢を語る前に、まず、こっちが喫緊の課題だと個人的には思うのですが、なかなか地に足の付いた話が出てこないので、歯がゆい感じです。報道されてないだけとかで、実際には水面下で進んでいるのなら良いんですけどね。


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コメント 13

たかさん

お疲れ様です。写真が必要だったので柏市南部クリーンセンターに昨日いってきたところでした。付近に、保育所、小中学校など、小さな子どもが通う機関が多かったので、現状の焼却灰管理はくれぐれも厳重にして欲しいとこです。周囲環境の定期的な計測も必要でしょうし。さらに水琴さんのご指摘のように、今後のことは何も決まっていないのに焼却灰や手賀沼の最終処理施設にある汚染泥はどんどんたまっているらしいです。各自治体が除染作業をすすめているだけに、喫緊の問題…ですよね。
by たかさん (2011-07-15 11:21) 

トモ

南部クリーンセンターの近所に住む友人が
ネットの情報を見て「煙にのってストロンチウムが飛んでくるかも」って
軽くパニックを起こしています。
その付近が局所的に線量が高い感じはしないので、
私は心配要らないと思ってはいるのですが、
友達に何と言ってあげたら良いのか分かりませんでした。

遠方に住む両親も今回の報道の内容をすごく心配しています。
主人の両親にも子供達を連れて実家に帰るように言われました。
新たなストレスです。。。
by トモ (2011-07-15 12:45) 

michi

先日アミュゼ柏で行われた放射線基礎講座での質疑応答で、
「クリーンセンターの報道を見て驚き、子供の部活を休ませた」という
方がいました。
トモさんのご友人と同じような感じと思われます。
凝縮され凝固した状態での数値にもかかわらず、ちょっと見数字が万で
大きく見える事も原因かなと思います。
焼却場ではダイオキシン対策でフィルターがあって周辺は大丈夫ということ、
またストロンチウム等は重いので柏にあるとしても超微量ということが
浸透していないようです。
封じ込めに成功しているように私自身は思っているのですが、
行政はもちろん丁寧な説明が必要ですが、市民の側も行政の情報を
細部まで分析する、あやふやなまま放置して人に伝言しない事も
重要ではないかと思います。
文科省、日本分析センター、東京電力など、データはそろってきていると思います。
by michi (2011-07-15 17:25) 

ゆでがえる

 焼却灰のなかの放射能、思っていたより高い数字で出ましたね。
 皆さんが積極的にお庭掃除でもしたのでしょうか。
 福島の瓦礫処理では10万ベクレルまで地下水対策をしたあとに通常と同じように埋立をする方向との報道がありました。
 焼却灰や汚泥の類も 同じような処理になりそうな予感がします。
 コンクリートかガラスで固化して埋めちゃうんですかねえ。
 まさか 灰をそのまま放り込んで、土を被せてお仕舞なんてことにはならないとは思いますけど。
by ゆでがえる (2011-07-15 19:31) 

MS

知人が庭木を切ったり芝を張り替えたりして個人で除染していた人がいます。そのまま普通ゴミに出したようなので、そういったものが焼却場に集まったのだと思います。自分が危険と思うもの(ガイガーカウンターではかって実際に放射線量も高かったようです)を平気でゴミに出す神経にちょっともにょっとしました。後手後手になっている行政がいけないんだとは思うのですが…。
by MS (2011-07-15 21:46) 

あんず

私、南部クリーンセンターの近くに住んでいます。
歩いて10分もかからない距離なのでとても不安です


専門家によって見事なくらい(笑)異なる見解に、何の知識も持たない私は、『で? 結局どうなの?』と首をかしげるばかりです


原発事故当初、ストロンチウムは重くて遠くには飛散しないと報道されていましたが、最近ネットでホットパーティクルという言葉を目にしました。

水琴さんはホットパーティクルについてどう思いますか?

by あんず (2011-07-16 03:04) 

水琴

たかさん>

適切に管理できていることを確認し、安心を担保するためにも、定期的なモニタリングがあるといいですね。

その後、焼却灰から放射性物質を溶出させる技術は水面下で実験が進められており、そこそこ見通しが得られているというような情報がありましたので、それほど遠くない将来、処理が進められるのではないかと期待しています。

by 水琴 (2011-07-21 01:17) 

水琴

トモさん>

南部クリーンセンターの処理フローが市のホームページから見られますが、かなり先端的なもので、煙のほうの心配はほとんどないと思います。セシウムやストロンチウムは、灰や洗煙排水のほうへ行くはずだと思います。

灰も溶融固化させますし、洗煙排水も処理してから下水に放流しますし、周辺に飛散することはきわめて考えにくいと思います。

by 水琴 (2011-07-21 02:17) 

水琴

michiさん>

コメントありがとうございます。

そうですね。揮発性の有無も含め、どのような化学的形態で存在しているかということが、移動を考える上で重要なポイントだと思います。

放射性の部分の情報や計測データは結構あふれてきていますが、そういう基本的な化学的性質については、未だあまり説明されていないような気がします。そのため、移動メカニズムの推測がしづらく、神出鬼没という感じがして不安を醸成しているのかも知れません。

by 水琴 (2011-07-22 00:14) 

水琴

ゆでがえる さん>

そうですね。梅雨が明けて、草刈りなど、いろいろと庭や畑等の手入れをする季節になったのが大きいのではないかと思います。東大の柏キャンパスも草取りしましたしね。

処分方法ですが、コンクリートよりもガラスの方が封じ込め機能は圧倒的に高いです。個人的なイメージでは、多少オーバースペックでも、安全第一と言うことで、ガラス固化して埋め立てることになるのではと思っています。

by 水琴 (2011-07-22 00:32) 

水琴

MS さん>

たとえばどこかの企業や研究機関が、放射性物質が付着していることを知っていながら、一般廃棄物に捨てたりしようものなら、非難囂々ですし、法規制もあります。それを考えると、確かに、一個人とはいえ、軽々しく捨てるのは道義的にどうかという議論はあると思います。

一方、郊外では植物体のゴミは必ず出てくるもので、結果論的に言えば、各家庭の焼却炉や野焼き等で処理するよりも、先端的なゴミ処理場で燃やして、灰を固化処理しておいた方が安全という見方もあるかも知れません。

もちろん、本当は、専用の回収・処理ルートを用意するのがベストですけどね。

by 水琴 (2011-07-22 00:51) 

水琴

あんず さん>

ホットパーティクルの話ですが、個人的には、かなり胡散臭い情報と思っています。少なくともネット上で広がっている内容は、理系人間としては突っ込みどころが多すぎて、とても信頼できる情報とは思えません。どのあたりが納得できないかについては、今度、記事にしようと思います。

ただ、その納得できない部分が、もともとの説が不毛だからそうなのか、わかりやすくしようとしてスベっているのか、はたまた伝言ゲームでおかしくなっているのか、よく分かりません。

また、非常に微量の議論をしようとしていると言うこともあり、アイデアの部分も含めて、すべてを決定論的に否定しうるかというと、それは難しいところがあるとも思います。学界では、とうの昔に否定されているということらしいですが、「絶対にない」ということは、現実的には証明できない命題であるということもあり、すべての部分で歯切れが良いわけではありません。

そういうわけで、ホットパーティクルの実在やその重要性については、現時点では相当疑わしいと思っていますが、今後、信頼できるデータを集積してまともな説になっていくのか、想像力たくましいトンデモ説になっていくのか、一応注視しておこうかな・・・というスタンスでおります。

by 水琴 (2011-07-22 01:19) 

たろう

水琴さん

こんばんは。お久しぶりです。
ネット上で気になる記事を見つけました。
柏市の表土が、場所によって、かなりの高濃度汚染されているというものです。素人ゆえ、どうとらえていいものか迷いまして。ご意見伺えますと幸甚です。下の記事に、おかしな解釈は含まれていないものでしょうか?それとも事実のみ記載しているのでしょうか?

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/13879
by たろう (2011-08-17 23:10) 

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