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個人と組織またはシステム(3) [夜話]

察しの良い方は、すでに、昨日の時点で、今日は何の話が来そうなのか予想済みかもしれない。そう、やっぱりシステムと言えば、将棋を取り上げないわけにはいかないよね(笑)

というわけで、将棋の話・・・だけど、具体的な技術の話ではなく、戦法の名前とかそういうことについて。
将棋の戦法には、森下システム、脇システム、藤井システム・・・といった「システム」の名を冠するものがある。もちろんこれは、ごく最近の戦法のことで、江戸時代から羽生さんが出てくる前くらいまでは基本的には、石田流とか人の名前+流がついていた。鷺宮流とか地名がついているのもあるけどね。それから、○○流というと、具体的な戦法を指すこともあるけど、棋風を表すことも多い。大山流と言えば、「粘り強い受け」とか。戦法指すときは、そのまま○○戦法ということもある。この前升田賞を受賞した引き角戦法とか。また、○○定跡と名前がついているのもある。木村14世名人の木村定跡とか升田定跡とか。あと、○○式というのもあるけど、これは今のところ石田流の修飾についているのばかりかな。升田式、鈴木式、久保式の各石田流が有名か。最近は、○○新手という言い方も良く出てくる。これは、戦法というよりも一手だけの工夫を指しているのだけど。

さて、それにしても、この名前の付け方には一定のきまりみたなのは、あるのだろうか。言い換えると、どういうものは○○流で、どういうのが○○システムなのか・・・とか、そういう傾向みたいなのはあるのだろうか。

水琴の見解では、戦法自体と名前の関係にはあんまり傾向はないと思う。ただ、それに対する周囲の見方や評価には確実に差があるというふうに思う。

たとえば、○○定跡とか○○システムというのは、その水も漏らさぬ系統化された指し回しの部分を評価していると思う。それから、中盤の仕掛けから終盤の入口くらいまで研究されているというイメージがある。一方で、○○流というのは、どちらかというと大局観の部分を評価しているのではないか。例えば、鷺宮流とか新山崎流とか、システムの名を冠してもおかしくないくらい系統化されているようなものもあるけれど、系統化されているところが評価されているのではなく、そういう指し回しが成立するという大局観や創造性が評価されているのだと思う。○○新手に至っては、系統化もなにもなく、ただ、面白い一手ということだ。そこは、純粋にアイデアを評価しているのだと思う。そして、○○新手は周囲に認められて、たくさん採用されて系統化されだすと○○流とかに名前を変えていく。

システムの名を冠する戦法は、藤井システムを最後に、出現していない。一方で、新山崎流とか富岡流とか遠山流とか、その浸透度の差はあれど、○○流の名前がついた戦法や指し方が増えている。また○○新手という呼び方が非常に増えている。注目を集めた一手にとりあえず、そう名前をつけておくわけだ。

思うに、将棋の技術は体系化が一段落し、今は、従来の枠におさまりきらない新たな地平を探すというところにシフトしているのではないかな。序盤に一手損・二手損してみたり、角道を止めない振り飛車、角交換しても五筋の歩を突くとか、従来のセオリーに反している分野の開拓が進んでいる。すると、当然ながら、体系化というよりは創意工夫を重視する世界。だから、個人の創造性や大局観を評価する○○流とか○○新手という呼び名が増えているんじゃないかと思う。

あ、別に最近の戦法が系統立ってないというわけではないよ。系統立っているという所よりも創意工夫の部分に注目が集まってる・・・ということだと思う。羽生さんのたとえ話を借りれば、高速道路を建設するのがシステムとか定跡で、荒野を切り開いて道をつくるのが○○流とか○○新手だと思う。新山崎流とかは、最初荒野を切り開いていたけど、今や高速道路になってしまった感がある。

ともかく、要するに、今は、系統化すべきところがほとんど終わって、行き詰まってきたので、次の地平を探すという段階に将棋界は移っているのだと思う。

ひるがえって、現実の世の中はどうだろう。残念ながら、従来のシステムの限界が露呈し、閉塞感が強いものの、次の新手が全く編み出せていないように思う。将棋界に遅れること何年すれば、次の地平を探す段階に移っていけるのかは分からないけど、とにかくそうしないといけないことは確かだと思うんだけどね。システムとか組織論への信奉をいったん捨てて、人間と人間の創意工夫を大切にし、もり立てていくことが大事なんじゃないかな・・・と水琴は思うのです。

そのためには、一時的な失敗とかそれに伴う無駄とかを恐れてはいけないと思う。つまり、個人の試行錯誤の過程を大切にするってこと。今の世の中は、他人の失敗や無駄に対して非常に手厳しい感じがあって、みんなそれが怖くて新しいことがのびのびとできなくなってきている気がする。そういうところの意識を変えてかないと、閉塞感が強いまま、ずるずるとジリ貧になってしまいそうで怖い。

とりあえず、できそうなところから。
まずは、日本代表が新しい試みを存分に試せるように、暖かく応援してみようじゃない?


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