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第82期棋聖戦第一局 [将棋]

羽生棋聖に深浦九段が挑戦する今期棋聖戦の第一局。深浦九段は二期連続の挑戦者。前期は、三連敗でしたが、今期はどうでしょうか。羽生棋聖は、一日制のタイトル戦はめっぽう強く、挑戦者が一勝をあげることが難しいという状況が続いています。

羽生棋聖は、言わずと知れた将棋界のスーパースター。名人戦をいきなり三連敗し、不調説もささやかれましたが、名人戦は三連勝を返し、王位戦は挑戦権争いをし・・・と、いうわけで、全然不調じゃないように見えます。居飛車系オールラウンドで、あらゆる戦型を指しこなします。攻守ともにすぐれバランスがとれている棋風ですが、特に最終版のごちゃごちゃしたところをわかりやすく寄せていくのが非常にうまいという印象があります。

挑戦者の深浦九段は、居飛車党で、こちらもバランスの取れた棋風です。攻めは素直にシンプルに、受けでは奇抜な粘りの一手を繰り出し、怪力を発揮する印象があります。

さて、本局は、柏の花野井で対局でした。大盤解説は、柏将棋センターでしたので、途中からちょっと覗いてきました。門倉新四段とプロフェッサーが解説でした。

棋譜中継は、こちらをご覧ください。

本局は、出だしに不思議な駆け引きがあって、結局矢倉になりました。▲2六歩を先に突いている関係上、いわゆる飛先不突き矢倉の定跡にはならず、早囲い模様に。

そこで早囲いを牽制して、後手が中央からカニカニ銀で動いてくると言う展開に。

昼食休憩あけの31手目▲2五歩がケンカを売った手で、普通は▲5八飛くらいが相場のところ。これは、もう収まらない。後手は△5五歩から、開戦。

中央で銀交換し、中央を制したのが後手の主張。対して先手は、二筋を交換し、角を捌いたのが主張。どちらが勝るか・・・という大局観の勝負です。後手のほうが前のめりの序盤だっただけに、第一感は、中央で銀が捌けたのは作戦が通っているので、気分良し。後手持ち。

42手目△5六銀~44手目△5六同飛は当然とは言え、快調な攻め。なかなかタイトル戦で、こういう単調な展開は珍しい。

対して、▲3七角は、△6四角の筋を防ぎつつの桂取りという手で、第一感。飛車成り自体は、そこまで脅威ではない。

対して、46手目△3九銀とB面攻撃。・・・指されてみると、飛車のいい逃げ場所がない。これは痛い。

52手目△1八金と飛車を取られたときに、▲同香と取り返せないのでは、後手優勢でしょう。先手は非常手段で、▲5三歩と叩いて飛車先を止めたけど、代償として後手の角が世に出たので、後手としては全く不満のない展開。

58手目は、△4九飛~△5九角成の筋で攻め合うのも有力と大盤解説では言っていたが、本譜は、△6二金。やはり解説や控え室の検討は優勢でも過激になりがちだが、対局者はやはり冷静な一手が多い。

61手目▲5六香で、先手は5筋の制空権を取り返したものの、その裏から64手目△5七歩がうまい拠点作りで依然として先手陣は炎上中。

68手目△5八歩成の局面で、解説会では「次の一手」クイズ。候補手は▲5五銀、ひねって▲4五銀(質駒を与えて、誘われた後手が一気に決めに来て間違えるのを期待)などでしたが、実戦はもっとひねって▲3七桂打!

内心、打たずに▲3七桂としたらどうなるか(△同角成には▲4五歩として大乱戦になりそうなので、優勢な後手がひよって間違えてくれないかな~という狙い)というのを冗談で考えたりもしていたので、▲3七桂打もある筋だとは思いましたが、驚きました。

70手目△3一玉は冷静。こういう将棋は、どこかで、この一手を入れて決め手にしたいなあという構想で指すもの。思いがけず、早い段階で一手の余裕を得たので、ここが寄り頃でしょう。

先手は、行きがかり上、71手目▲6五歩と飛車包囲網を狭めていくしかない。しかし、72手目△7五歩が激痛。▲同歩はいきなり△7六歩と叩かれても厳しい。金銀どちらで取っても、△6八と~香車を抜かれる筋でアウト。

しかたなく、73手目▲5五馬でしたが、△5四歩でシビレ形。角を渡すと先手玉が詰むし、△4六飛と生還されては、▲3七桂打~▲6五歩の顔が立たない。しかし、75手目▲8二馬も涙の一手。深浦九段でなければ、投了でもおかしくないぐらいのところ。

ここしばらく先手が有効な手を指せていない。実質的にパスしまくっているような感じだ。対して後手は玉を寄り、7筋を取り込み、5四に歩を打って、先手の香車の筋を止めることに成功。しかもまだ飛車は取られていない。

そこでまた、78手目△4八銀不成がにくい。5七の地点はすでに先手が一枚負けているのにさらに一枚足されたので、絶対に受からない。あせってと金を現金と交換するのではなく、遊び駒を使って手厚く寄せに行く。これが、最後の決め手。

先手は飛車を取りに行くしかないけど、間に合わなさそう。それに、仮に取られたところで、何かの時に△4四角と引く手が絶好になる(▲3七桂打と▲6五歩が悪手になるし、たいていの変化で詰めろになる)ので、怖くない。後手勝勢。

以下、程なくして先手投了。

というわけで、羽生棋聖先勝。深浦九段としては、この敗戦は痛い。序盤に先手から注文を付けて駆け引きしたのに、中盤、仕掛けのところで大局観の違いで、少し差を付けられた。その後、終盤の入り口で勝負手で指した手をことごとく悪手にされて、サンドバック状態になり、最後は大差の完敗。開戦してからは、ほぼノーチャンスに見えた。やはり、カニカニ銀を捌かせてはいけなかったのではないかと思う。

これは、いくら鈍感力の深浦九段でも精神的ダメージが大きいかも。羽生棋聖は充実してますね。


タグ:将棋 棋聖戦
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